桑の木と紙ひこうき

  
6月に入ってすぐのある日のこと。庭の桑の木と丸太を組み合わせて作ったアスレチックで遊んでいたSくんは、アスレチックをつたって箱ブランコの屋上(上にべニア板を張っています)に上りました。
板の上には桑の実がたくさん落ちていました。ブランコの隣の桑の木が、程よい木陰をつくってくれています。この時期、たくさんの小さな実をつけ、熟した桑の実が落ち始めていたのです。
Sくんはせっせと桑の実をつまんで下に落として掃除をし、大人はきれいな実を見つけてせっせと食べて、ほどなくして屋上スペースはきれいになりました。するとSくんは「紙ひこうきを作ろう。紙、持ってきて」と大人に頼みました。
紙を届けると、Sくんは紙が風に飛ばされないように足で紙を押えながら、どんどん紙ひこうきを折っていきます。折っては飛ばし、折っては飛ばししているうちに、Sくんは「木にひっかけよう」と言って桑の木めがけて飛ばしました。
一緒にいる大人は、「クリスマスツリーのようなイメージなのかな?」「ひっかかっちゃう、っていうことが面白いのかな?」「本当はもっと遠くまで飛ぶ紙ひこうきを作りたかったのかな?」「うーん、よく飛ばすのも、木にひっかけるのもどっちもなかなか難しいなあ…」など、思いをめぐらせて紙ひこうきを折りました、
気持ちの良い風に吹かれながら静かな時間が流れました。しばらくすると、Sくんは「さあ行くよ」と言って、屋上から軽やかに庭へ下りて行きました。