エレベーターづくり

2006年4月
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子どもの発想をそばにいる大人が実現できると、子どもの遊びがどんどん展開してゆき、二人の力が合わさっておもしろいものを作り上げてしまうことがあります。エレベーターづくりは、そういうものでした。 A君は最近、ビルに興味をもっているB君と外出し、ビルの中をエレベーターを使って探検して、楽しい興味深い経験をしました。ある日、学校にある小部屋(ベッドひとつ分のスペースしかない部屋)をエレベーターに見立てて遊び始めました。壁に各階のボタンがあるという空想を設定して、ボタンがあるかのように押す真似をします。扉が開くたびに、地下駐車場だったり自分の家だったりします。
一緒に遊んでいた大人は「その空想をちょっと形にしたらおもしろいかな」と思って、各階のボタンと開閉のボタンを紙に書き、壁に貼りました。するとA君は大変喜んで、エレベーターには何が必要かを考えて、次々に書いてほしいものを言いました。大人はせっせとそれを紙で描き、A君はテープで貼っていきます。そのうち自分で書き始め、なんと「戸袋に手をひきこまれないよう注意!」のステッカーを作りました!また、扉が開いたときに階がわかるように、扉の向かいがわに「6階」や「9階」の表示も作りました。その作業中に、小部屋の電気が切れて真っ暗になるハプニング発生!
「このハプニングで遊びが中断されるのは残念だ」と心配している大人をよそに、A君は「あ!停電だ!エレベーターが動かない!」と機転を利かせました。そして、嬉々とした表情で、扉に「工事中」や「立入禁止」と書き、「工事の人(修理が上手なスタッフ)を呼びに行こう」と言いました。突然のハプニングに動揺せず、瞬時に自分の遊びに変えてしまうその子どもに、逞しさを感じます。 このエレベーター作りは、子どもの観察力の鋭さに改めて気づかされたと同時に、A君がエレベーターに乗ったときに体験していること――「指が引き込まれたらどうしよう」とドキドキしていることや、扉が開く瞬間のワクワクした気持ち――も遊びの中で見事に表現されていて感心しました。エレベーターを完成させ、そこでたくさん遊んだあと、ビルに興味をもっているB君がやってきて、そのエレベーターを使って遊んでくれました。子どもがもつアイデアの魅力が、きっとB君にも伝わったのだと思います。