幼稚部 Kくんの一日

筆と板と自分が 数十分の活動の中で関係を作る。      握った筆に力が入り、点と線がどんどん生まれた。    時には「書」を思わせる「ハネ」や 「タメ」が出る。 そして目が輝き、ほほえんでいた。 もうやり終えた時、手を自分から 止めて画面を見ている。      大人達はそれを感じて、こちらも微笑んでいた。            椙田(アートティーチャー)
200607
この日、Kくんは、登校してすぐ2階に行くことを選びました。階段をのぼるとすぐにアートティーチャーと出会い、手を伸ばして「おはよう」とあいさつをしました。自分からの「おはよう」の様子がとても積極的で、気持ちが乗っている様子が伝わってきました。2階ではちょうど、朗読に合わせて影絵が始まろうとしていて、午前中一杯楽しみ、お弁当を食べました。
気候も春めいてきて、ちょうど有栖川宮公園の梅が満開になっていたので、さんぽに行こうかと提案してみると、ニコニコしながら「はーい」と手をあげます。周りのお友達にも声をかけ、クラスを超えて、総勢11人で出かけました。たくさんのこどもたちが遊んでいて活気にあふれる中、すべり台やジャングルジム、ブランコをからだ全体で楽しみました。
帰ってくると、玄関を入ってすぐのホールで、絵を描く用意がされていました。ほかのこどもが描いた後で、パレットにきれいな絵の具がたくさん出ています。Kくんは、もうそのパレットから目が離せなくなっていて、ぐっとからだを伸ばして、描きたい気持ちを伝えてくれました。振り返れば、この日は2日連続で2階の部屋で絵を描いた後でした。朝真っ先に2階へ行ったのも、もしかして人と出会うことだけでなく、絵を描くことを期待してのことだったのかもしれません。腰を下ろすのも待ちきれない様子で絵の具に手を伸ばします。これまでの2回よりさらに力強い筆さばきで、勢いのある線を描いていきます。シュッというはね、はらい、さまざまな線が増えていき、見る人を引きつけます。さんぽから帰ったときのはずんだ表情から、真剣な表情へと変わり、とても集中しているのが伝わってきました。納得がいくまで集中力は途切れることはなく、終わりは自分で決められるKくん。この日もずいぶん長い間取り組みました。終わりと決めると、潔く筆を握る手を離し、もう握りませんでした。そして、やり終えた満足と自信が感じられる、すっとした表情で帰りの用意へと移りました。